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September 02, 2007

繊細かつコダワリのディテール何処に…。

Waseda_univ_gs00解体前の早稲田大学文学部校舎を見て、村野藤吾氏のらしい繊細かつコダワリのディテール工夫がされていたのは、外装と階段の手すりでした。

外装については、一見レンガタイルと思われた素材の朽ちはじめた部分をよく見ると、セメント系の材料でつくられているのがよくわかります。写真は屋上部のパラペット越しに外壁を見下ろして撮影しましたが、外装タイルの端部が朽ちている部分を見ると、その破断面がセメント系の素材であることがわかります。要するに重厚感のあるレンガタイルのテクスチャーを実現するために村野氏は、焼成しないでつくる安価なタイルを工夫してつくりあげたのだと思います。

Waseda_univ_t06何度か外装は表面部の再塗装改修がされていた様子ですが、少しずつ中性化が進みてあちこちかのタイルが朽ちはじめてしまったのでしょう。そのタイルがどの様にして具体手的につくられたのか不明ですが、おそらく施工当時にしてみれば、この仕様は経済性と施工性(重量低減、工期短縮)に大きく貢献できたのだと思います。今で言うVEです。当時の設計仕様書や施工要領書が残存していれば、大変興味深いものです。

Waseda_univ_t03_2一方、目線レベルの低層部の外装タイル貼りでは、遊び心を交えてつくられていました。磁器タイルを用いていますが、ピロティ部やトイレ前の目隠し壁等には彫刻家の辻晉堂氏の作品を取り入れています。近くによってタイル仕上げ面の凹凸を見るとびっくりしましたが、その表面の段差は3センチ以上にもなる部分もありました。

Waseda_univ_t02タイルの焼成色の違いによってデザインされる壁画はよく見かけますが、当時の作品で磁器タイルの仕上げ面をここまで凸凹をつけて表現している壁画は数少ないのではないでしょうか?

Waseda_univ_t013次元的な躯体にさらに凹凸をつけて大胆にモザイクタイルを貼った建築としては、ガウディのグエル公園に敵うものはないと思いますが、その約1世紀後に学校建築のごく狭い限られた平面のスペースの中に精一杯壁画として表現している早稲田大学文学部校舎は、実に日本人の作品らしく愛らしく感じます。

Waseda_univ_t07辻晉堂氏の作品は抽象画ですが、1階玄関ホールには花鳥を表現した大理石モザイクの床モザイク画がありました。日本のフレスコ画第一人者である長谷川路可氏と武蔵野美術大学の学生達との共同作品だそうです。玄関部の床であるため当然仕上げ面の凹凸はつけられませんが、微妙に凹凸があるのは何とも手作り感があり温もりを感じます。施工当時に村野氏の下に一生懸命に校舎の建築に携わった様々な人間も様を想像することができました。

「建築」独特の、汗と涙のコミュニケーションありきのものづくりの良さを感じて嬉しい思いです。
また、ちょっとした部分や端部のディテールにコダワル建築家村野氏らしい意志がそこに込められている様な気がしました。

Waseda_univ_l01また、村野藤吾氏のコダワリのディテールといえば、やはり階段の手すり。早稲田大学文学部校舎は何気ない平面プランであり、一般的に階段はその上下階を移動する手段の空間でデザイン的に凝ることはあまりしませんが、村野氏は違いました。そこにある手すりの存在は優美でもあり華々しくもまります。

Waseda_univ_03無駄を省いて優美に空間を描く木製手すりの連続するラインは本当に美しいです。手すりは鋼製の角パイプで支持されていますが、こちらも必要最低限の部材で構成されています。また、階段空間にふんだんに自然光を取り入れた心地のいい空間となっています。村野氏は、階段空間をコミュニティの場となることを狙ってしたのではないでしょうか?

その美しい階段の手すりですが、こちらもどの様につくったかを想像してみるとなかなか楽しい思いです。当然、連続する手すりは現場で繋ぎ合わせたもの。ではそのジョイントはどこだろと探して確認してみると、確かになかなか苦労の跡が伺えました。

Waseda_univ_04木製手すりのジョイント部分は、踊り場のカーブが変わるところで微妙に「くの字」に折れていますし、その近くの鋼製角パイプのジョイントもよく見ると不恰好です。連続的で優美な木製手すりもも鋼製角パイプは現場で鍛冶工がまわし溶接をし、グラインダーで丁寧に削った様子が伺えます。

現在の建築技術では、3次元CD等や加工技術の発達で自然な形で難しい3次元曲線も綺麗に仕上げることが可能ですが、当時の現場での「力技」的な技術が、村野氏のコダワリとそれをつくる職人さん達の意地の格闘が想像でき、何とも微笑ましくも感じます。

最後におまけですが、早稲田大学文学部校舎が苦労してつくられた痕跡として、屋上に昇る階段室の踊り場のコンクリート床に端太角が打ち込まれてそのままになっているのに気づきました。

Img_4395階段のコンクリートを打節するのに、上部の踊り場と下部の中間踊り場の床とを一緒につくる為、中間部の踊り場の床は浮かし型枠的になります。その踊り場を支える為に、当時は床の中に端太角を入れ込んでペントハウス部のコンクリートを一体化して打節したのでしょう。

当時は手押しの一輪車で高さ37mもの高さまで足場を渡ってコンクリートを打節したのでしょうから、大変なものです。しかし、その大変さがコールドジョイントとして現れ、特に上階部の老朽化に拍車をかけています。コールドジョイントからの漏水による白華現象がそれを証明しています。

屋上部のコンクリート打ち放しの柱や梁も、よく見るとコンクリートの打節した順序がはっきりわかるほどコールドジョイントがあり、かなり中性化が進行しています。

Waseda_univ_05
当初、「その規模と大きさにおいて大学建築史においても画期的な高層化」といわれたそうです。文学部の校舎の一部にまだ村野藤吾氏の建築は残りますが、躯体そのものの老朽化の為に、繊細でコダワリ続けてつくった村野藤吾氏の建築ディテールが壊されていくことに、哀しさを感じました。

優秀な大学校の校舎だけに、新しく生まれ変わっても、自分の建築に哲学をもって繊細でコダワリ続けた建築家:村野藤吾氏の意志だけはその空間に残し続けてほしい気がしました。


※この記事のデータは、見学会の時に戴いた丹尾ゼミの皆さんが作成した資料を参考に書いております。
 また、大変貴重な名建築を良き機会に拝見させていただき、ありがとうございました。

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