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March 08, 2006

温故知新に秘める建築の役割

o_hills06gr雑誌「NILE'S NILE」で安藤忠雄氏と表参道ヒルズの記事がありました。施工中の写真とともに綴られた安藤忠雄氏のカタチになるまでの関係者との対話がいくつか記事となっていました。さらにそのなかでも、記事の最後のほうに安藤氏がお金では買えない豊さについて語っているのが特に印象的でした。

本来、日本人は生活のなかに文化があり、それを楽しんでいたという内容で、歌舞伎、浮世絵、俳句などをあげて、現在の物欲至上の文化に日本人自らが気づき、歯止めをすべき時期に来ていると問いかけています。

建築の役割はお金で買えないそうした文化や生活の記憶を背負って存在しつづけなければならないとしています。そして建築は街を形成し、さらには、街が新しい文化を生む…。安藤氏は街並みと文化との関連を、特に表参道周囲ではアンテナショップが目抜き通りからキャットストリートの様な路地的なストリートに飛び火していく様子を例にし、街が発展していく様子を説いています。

建築は、ある意味で文化発祥の起爆剤的な存在なのかもしれません。青山同潤会アパートも様々な文化を発信してきました。文化が発祥する場は、人と人との交流が盛んですから、有機的というかアナログ的な独特の雰囲気を醸し出します。四季を感じさせる緑がさらにそれを演出します。

a_dojunkai2003018かつて青山同潤会アパートの敷地内にはたくさんの緑がありました。丁度今頃の季節には、ウグイスも敷地に飛んできて鳴いていたのを記憶しています。都心ではありましたが、同潤会アパートでの生活者は身近な花鳥風月と親しく暮らしていたのでしょう。しかし、ちょっぴり緑が少ないと思われていた表参道ヒルズは、安藤氏はまだ未完であるとしています。

a_dojunkai200308実はしっかりと仕掛けをしてあると言います。1棟だけ復元した同潤会の建物は、約1年後にはツタで覆われる様に、また、本体建物の屋上庭園は、2年後にはケヤキ並木となじむように樹木を配置していると安藤氏は語っています。

安藤忠雄氏は、コンクリートの打ち放しの無機的なファサードを多用し、時間がゆったりと進んでいる様な空間を演出する達人の印象が強かったのすが、今回のヒルズでは時間と共に変化する有機的な要素を建築に取り入れている気がします。外装ファサード照明や外構の疎水、吹き抜け空間のスロープ等…動きのある空間が主張を演出しています。

a_dojunkai200309動きのあるものは新陳代謝を必要とします。実は吹き抜け空間におけるテナントも、時間と共に新陳代謝を繰り返し、やがて独自の文化を発信させていくことになるでしょう。安藤氏はその辺も知り尽くし、あえて動きのある空間演出を仕掛けをしているのでしょう。

時代を超えて構築される文化は、やはり、お金では買えない豊さを人にもたらします。しばらく表参道ヒルズには目が離せませんね。歴史ある同潤会跡地に建つ建築の温故知新の大切さを感じました。

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