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February 22, 2006

さりげないホンモノの演出

p-con00表参道ヒルズのオープンからすでに10日を過ぎましたが、相変わらずすごい賑わいとなっています。
建築雑誌以外の雑誌でも、安藤忠雄氏の設計コンセプトが細かく記載されていていますので、その興味と人気のほどがよく分かります。今年のホットスポットです。

スロープの勾配や長さ、吹き抜け空間の話題がほとんどですが、私が表参道ヒルズで気づいた、安藤忠雄氏によるさりげない「ホンモノの演出」を紹介します。なにが、ホンモノというと、コンクリートの打ち放し仕様の見せ方です。やはり安藤建築だけにコンクリート打ち放しには相当なコダワリがあることが、伺えます。

そのコダワリは何で分かるかというと「Pコン」跡です。コンクリートの表面にできる「Pコン」の跡は当然きれいに割付られていますが、そんなことではありません。
今回の表参道ヒルズでは、内部空間では「Pコン」跡が、モルタル埋めを行わずに仕上がっているのです。

p-con01建築施工をよく理解されている方はお分かりでしょうが、知らない方もいらっしゃると思いますので紹介しておきますと、コンクリート打ち放しには、必ず壁表面に少しへこんだ丸い跡が残ります。それが「Pコン」跡です。「Pコン」とは何ぞや?というと、「Pコン」はコンクリートを流し込む型枠を一定のカタチに保つ為に使用される治具のひとつです。写真を見れば、ああアレかと分かるでしょう。

すこし細かく説明しますと、コンクリートの壁を構築するためには、コンクリートのカタチを決める為の型枠が必要であり、その材料の多くにベニヤ板を用いて加工します。ベニヤ板だけでは生コンクリートを入れたときに、側圧に耐えきれずカタチが崩れてしまいますので、ベニヤ板で形成された型枠の外側より金属パイプなどで補強をします。

その金属パイプをベニヤ板と密着させる為にと、型枠の内法間隔を一定に保つことを目的として「セパレーター」という硬い鋼線治具を使用します。その「セパレータ」のベニヤ板と接する部分に使用するにが、「Pコン」です。

「Pコン」は円錐台型をしていて、ベニヤ板に接している為、コンクリートが固まってから取り外しができるようになっています。そのため、「Pコン」はコンクリートの仕上げ面に跡として残るのです。ですから、この「Pコン」跡は本来現場で施工したものでしか存在しないのです。

一方、現場できれいなコンクリートを打節することが近年なかなか難しくなってきています。その理由には、いろんな原因がありますが、主な原因のひとつにコンクリート打節に精通した技術者や職人の不足があげられます。ですから、きれいなコンクリートの打ち放し仕様をつくろうとすると、安易に工場でつくったPC(プレキャストコンクリート)を用いたり、既成の模造品を用いてつくることが多くあります。

模造品には、樹脂剤形成された模造品やクロス貼りのものまであります。そういったものは、「Pコン」跡は、当然モルタル埋めされたような意匠となっています。「Pコン」跡をダミーで見せることにより、コンクリート打ち放しを演出しているのが模造品の特徴です。

しかし、ホンモノでしかできない仕様は?というと、実は「Pコン」跡をモルタルで仕上げないことなのです。
表参道ヒルズの内部コンクリート壁の「Pコン」跡をよく見ると、仕上げていない為、コンクリート躯体を構築するときに仕様された「セパレーター」がチョッと奥に存在しているのが分かります。模造品であると、この真似はなかなかできません。

ちなみに外部空間のコンクリート打ち放しについては、「Pコン」のモルタル埋め処理がされています。それは、外部空間は湿気によって鋼製の「セパレーター」を酸化させると、その膨張によりコンクリートそのものにひび割れの影響や錆び帯びによる外壁の汚れを懸念してモルタル仕上げとしているのであると予想されます。

o_hills0600仕上げないことによって、これは現場で純粋に構築した「コンクリート打ち放し」であることを安藤忠雄氏は主張をしているのだと思います。また、あそこまで綺麗にコンクリートを施工した大林組とそれに携わった現場で活躍した職人たちの技量の深さを思い知れます。すばらしい出来だと思います。

施工時にコンクリート打ち放し仕様には相当な気遣いを現場関係者はします。仕上げの精度、汚れ、傷…引渡しをするまで気が抜けない状態です。ですから、現場で真剣につくられた「ホンモノ」を見ると、自然と感激してしまいます。

また、現場打ちのコンクリートは、床との取り合い実際には汚くなってしまいがちであるのに対して、巾木もなくキリリとした入り隅線で仕上げっています。シンプルさがテナントブランドを惹きたてています。

さらには、あれだけの規模の建築物にもかかわらず、コンクリートの打ち継ぎ部をほとんど分からないようにして施工してあるところも、天晴れ!です。スロープ天井の仕上げが石膏ボードに塗装で仕上がっていましたので、その辺でうまく納めているに違いないでしょうが、細かな点までつくる者たちが気を遣いながらつくり上げた苦労の様子が見られます。

建築業界にとっては、負のイメージの報道が昨今多いだけに、きらりと光る「ものづくり」の真髄を意識した建築の仕事、すばらしいと感銘致しました。

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