« 構造計算書偽造問題について(6) | Main | 構造計算書偽造問題について(要点) »

December 07, 2005

構造計算書偽造問題について(7)

一方、設計図書どおり建物の施工がされているかを確認する業務を行う者として、「監理者」という立場の者が存在します。先にも記述したように、小さな設計事務所の場合、意匠設計者の同一人物が兼務しその業務をおこなっていることが多々あります。

実は、建設業界のこの実態こそが、設計時の「間違い」や「瑕疵」さらには「不正」などに対して見過ごしてしまったり、ウヤムヤニしてしまいがちな背景を構築してしまったであろう気がします。万が一設計図書に不備があった場合、やはり「設計者」=「監理者」であれば、個人防衛に走ってしまうのではないでしょうか。

「設計者」=「監理者」となるような背景になってしまったのは、設計図書の詳細を把握するのにあたって、設計者が監理者に対して細かくその主旨やディテール等を説明する面倒くささを省くためになってしまったと言えます。さらにその背景には、その建物を建設するプロジェクトが開始されるまでに、設計者が設計図書をキチンとまとめられない実態が、建築業界で当り前の状況であることがあげられます。

設計図書が曖昧であったり、不備であったりする状況で各契約行為がすすみ、プロジェクトが動いてしまえば、当然設計者は責められるわけです。ですからそれを避ける為に、監理業務をこなしながら実は、時間内に完了しなかった設計業務をおこなっているのが実態であることが多いのです。近頃の設計事務所は分業化され、すり合わせの時間もなく、総合的な「技術力」がなくなってきていることが大きな原因でしょう。

また、設計者が施工中に監理業務と設計業務をすすめている理由としては、施工者がそれを手伝ってくれることが設計事務所虚弱化の温床を生んでしまった気もします。「設計者」という立場も「監理者」という立場も、キャッシュフローの構図から明らかな様に「発注者」側の立場にいます。施工者としては、「設計者」兼「監理者」のフォローをしてあげないと、コスト的に不利益を生じる可能性があることが、残念ながら、そいった歪んだ仕組みに変貌していってしまった気がします。

依然に何かのコメントで記述しましたが、「設計者」はやはり意匠、構造、設備を総合的に設計図書で完璧に「総合図」としてまとめて、はじめて設計図書が完成されたと見るべきでしょう。大手設計事務所でも設計図書の特記仕様に、総合図は施工者がまとめる様なことを表記していることがありますが、本来大きな間違いなのです。

線地区業界では、施工者が立場上、設計のお手伝いをしてしまう建築の「何でも屋さん」、つまりゼネラルコンダクター(ゼネコン)の存在で当り前になっている体質そのものを崩壊しなければいけないのかもしれません。

理想論の様でもありますが、「設計者」は「設計業務」をキチンとおこない、「施工者」が「設計図書」に基づき、「監理者」の監視のもとで施工を行う建築業界の業務フローがしっかりできていれば、今回の構造設計偽造問題を生む背景にならなかったと想像できます。

大手設計事務所とはいえ、やはり同じ組織の中に「監理者」がいます。今後は、「設計者」と「監理者」と別企業とし、監視の目を増やすことが大切なことでしょう。実際最近動向として、日本の建築業界の特に公共事業やPFI事業では「設計者」と「監理者」を明確に分け契約し、設計と施工を見守る様になってきました。

民間事業に対しても「設計者」と「監理者」の明確な線引きをおこなうべきでしょう。またこれには、建物の計画・企画段階に十分時間をかけ、矩計図や詳細図を描ききり総合図をまとめることが、ポイントとなります。

約2年前に新潟市の朱鷺メッセのブリッジの落下事故がありましたが、この事例も、設計図書に不備があり、施工中にあわてて変更対応した結果、大きな過失を生んだ事件です。

スピード経営の時代の流れのなかで、他企業との競争力をつけるためには、コスト縮減と時間短縮がまず着目されます。しかし、それ以上に大切なものは、「公益の利」や「安全」です。時代は、計画段階から建物が完成し運営までの長い期間プロジェクトを俯瞰的に監視する技術者(プロジェクトマネージャー)を要求しはじめている気がします。
(おわり)

追伸:政府が構造計算を偽造せれたマンションの住民に対して救済措置をとることが発表されました。多角的な見解とスピードある行動に今後、注目と期待をしたいです。

|

« 構造計算書偽造問題について(6) | Main | 構造計算書偽造問題について(要点) »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/53410/7504769

Listed below are links to weblogs that reference 構造計算書偽造問題について(7):

« 構造計算書偽造問題について(6) | Main | 構造計算書偽造問題について(要点) »