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December 03, 2005

構造計算書偽造問題について(4)

構造設計偽造問題について、第二に「設計段階」での問題点をあげてみます。
まず第一に建築の設計業務そのものが、分業・専門化している点が上げられます。これは仕方のない事ではありますが、そこに設計段階でチェック機能がはたらかない事実があります。

建築の設計の場合、主に意匠設計、構造設計、設備設計が設計業務に分かれ、設備設計は、さらに電気設備、空調機械設備、衛生設備などに専門・分業化されています。ある程度の規模の建築物や複合施設などは、全体を統括し、調整・確認する「基本設計者」がいますが、殆んどないのが実態です。

実際には、建築の設計の場合、意匠設計が優先されることが多いため、意匠設計者が全体設計をリードしてフォローしまとめることが大多数ですが、実際には意匠設計者は「構造設計のプロ」ではありませんから、計算結果としてあがってきたものに対しては、それを信じてそんなに厳しくチェックすることはないでしょう。

しかし、意匠設計者であっても、やはり一般的な歩掛り的な感覚や構造比率を理解している設計者であれば、あるいは構造的な感性のある設計者であれば、あまりにも構造断面が小さかったり、鉄骨や鉄筋量の少ない建物であれば、おやっ?と気づくと思いますが...。

現在、第一線で活躍する建築設計に携わる方のなかで、実際その様に気づく方は、なかなかいないと思います。なぜなら、設計者の多くは日頃の業務に追われ、現場での感覚は全くといっていほど持ち合わせていませんでしょうから。

コンピューターが発達した背景もあり、要領さえ習得すれば簡単に構造計算ができる様になりました。ひところの手計算で構造計算をおこない、確認申請を実施していた時代は間違い防止の為に、計算結果に対して建物の延べ床面積等から構造比率のデータを用い、チェックと確認を意匠設計者であれ営業マンであれ、行っていたものです。

人が単純に頭の中で描く「コンピュータ」=「正確な結果」のイメージが持つ錯覚と盲点を今回の事件は意図的について発生した犯罪のような気がします。いよいよ姉歯建築士も、刑法犯罪の扱いとなり「逮捕」されるという動きがある様子です。「公益の利」よりも「私欲の利」を選択した技術者に制裁が下るのは当然のことでしょう。

一方、現在いろんな形状や仕様の建築物が巷に多くなってきています。当然専門の構造設計士に依頼しないと構造物の計算はできない状況に時代は進んでいます。それが悪いとは決していいませんが、どこかでアナログ的にでもチェックできる感覚が現在の建築業界に失いつつあるのではないでしょうか。いわゆる「プロの感覚」ってやつが薄れてきている危惧があります。

自分の専門外のことは他人におまかせしすぎている点と全体的にプロジェクトそのものを見つめる「監査の目」と「プロの感覚」が設計段階に必要である時代になってきています。まさに、イーホームズなどの民間企業の建築確認代行業務の甘さがそれを物語っています。

高度情報化の波にのり、面倒なことがかなりの範囲で合理的にデジタル化され、専門的なことも便利に処理できるようになりました。しかし、今回の事件でわかるとおり、携わる人間自身の倫理とチェックや監査をする者にアナログ的「プロの感覚」が如何に必要であるかを実感しました。
(つづく)

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