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November 25, 2005

構造計算書偽造問題について(2)

では、第一に発注者が計画・企画段階での問題点をあげてみます。
私は、その問題点のひとつに『発注者が建設費についての知識に乏しく、その情報の入手も少ない点』があげられると思います。その点について説明していきます。

発注者にはいろんな方がいらっしいます。その多くは地主さんであったり、不動産会社であったりしますが、建築や不動産の知識が全くない発注者の方もいます。当然のことですが...。そんな発注者がまず建物を建設するのに計画するのは、「お金」です。先立つものがない限り、実現しませんからこれも当然のことですね。

その建物を建設するための資金ですが、細々とした経費はさて置き何に最も多く費やすかを考えると、やはり建設費です。次に建物が完成してから今後長年に渡ってかかる点検とメンテナンス費です。そしてその次が設計費と監理費です。大規模な建築の場合、建設費よりもメンテナンス費のほうが多くかかることもしばしばありますので、必ずしもこの通りであるとは断言できません。あくまで一般的な場合です。

意外と多額にかかるメンテナンス費については、建物が完成してからはそこに建物を使うヒト達の使用料(賃貸料)や不動産購入費の収入があるわけですから、比較的、上手く建物の各使用料や購入費を設定すればなんとかなります。また、毎月の管理費などを徴収するのが普通ですから、メンテナンスに多く費用を発生する中長期修繕の費用も準備しやすいわけです。

一方、建設費、設計費と監理費については、その多くを発注者が準備しなくてはなりません。発注者はこの大きな3つの支出に対して、いつの段階でどれだけ支払いを入念に計画し準備しなくてはなりません。自己資金が少ない場合は、様々な金融機関等に相談されると思いまいます。

さて、その3つの費用のうち設計費とや監理費については、建物の建設費に対しての掛け率で概ね決定します。したがって、建設費を抑えれば、必然に全体コストが下がる仕組みとなっています。そして、その建設費ですが、それを占める大きな割合が、構造にかかる費用です。

発注者は、建物を売ったり賃貸するためには人気が出る様に、建物は見栄えのいいものを要求したがります。他の物件と差別化するためには、仕上げのグレードを上げたくなるのは当然のことかもしれません。その思いから、表面に表れてこない構造にコストダウンを計りたくなってってしまう訳です。

発注者側の立場に立てば、全体の費用を抑えるためには、建設費の中の構造にかかる費用を抑えたくなってしまう現実があるのです。設計者に対しても何とか構造にかかる費用を抑えて欲しいと無意味に要求してしまう可能性がここにあります。でも、これは言うまでもなく地震時などのことを考えると大変危険なことです。

私は、発注者が建設費に対してある程度の知識があれば、この様な危険な要求に走らないのでは、と思います。具体的には、「建設費全体にかかる構造躯体にかかる割合」の知識を持ち、チェックすることです。構造にかかる建設費があまりにも極端に減額されている建設費の内訳でしたら、ちょっとオカシイぞ、気づく訳です。

また建設費の内訳から、建物の規模と構造にかかる躯体積算数量からもある程度判断が可能です。一般的に「構造比率」と呼ばれるものです。建物の延べ床面積や用途などからコンクリートや鉄筋、鉄骨の使用数量の妥当性を知ることができます。マンションなどのエンドユーザーは、発注者ではありませんから、その内訳は知ることはできませんが、発注者ならその確認が可能です。

発注者も、そういった「建設費についての知識」についてもっと関心を持つべきあり、関わるべきだと私は思います。なぜなら、発注者は安全で安心して暮らせる為の居住空間を提供するわけですから。

建物の構造には、様々な形態があります。鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造などです。また、地震に対しての考え方(設計)も多様です。耐震、制震、免震の考え方が主にあります。それらの組み合わせや建物の規模、用途、建てられる土地の地盤(地耐力)によって、建物の構造にかかる費用が異なり、施工会社によって経費の割合が異なりますので一概に言えませんが、その割合は50~60%程度が一般的ではないでしょうか。

仕様の差による比率の違いについても、設計者等が実績について発注者に教えてあげることは可能だと思います。しかし、これはあくまでも設計者が善意を持っていることが前提ですが...。
行政や第三者機関が実績について調査分析し、いわゆる「構造比率」を公表したり、建設費についてのある程度の知識を提供していくことが、計画・企画段階での今後の課題ではないでしょうか。
(つづく)

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