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October 28, 2005

『蝉しぐれ』にみる光と影

映画『蝉しぐれ』を観てきました。周知のように藤沢周平の出生地、山形県鶴岡を舞台にした叙情感たっぷりの原作を描かした作品です。映画に出会うまでは、恥ずかしながら小説の中身をよく知りませんでしたが、映画のシーンの間合いを楽しむには、きっと小説を読んでから観ることをお薦めします。文四郎の熱く繊細なこころの揺れ動きを感じます。

映画で描かれる庄内平野の四季の美しさが話題となっていますが、叙情感の効果を発していたと感じたのは、部屋の中のシーンでした。印象的であったのは、障子や行灯(あんどん)にみる光と影です。実に巧みであったと思います。目立ちはしませんでしたが、場面ごとに武家屋敷の由々しき日本庭園から障子にあふれる自然光が美しく感じました。

JR東日本で配布されている無料雑誌「トランヴェール」でも『蝉しぐれ』の物語と共にその武家屋敷の様子を紹介しています。鶴岡に武家屋敷は今でもその面影を残して実在しているのです。庄内藩校致道館や菅屋敷と庭園、旧風間家住宅丙申堂などがそうです。旧風間家住宅丙申堂は国定重要文化財であり、菅屋敷は文四郎が「死に行く者の気持とは...」と里村に迫った屋敷のモデルだそうです。

映画の室内空間の殆んどはセットで撮影されている様子ですが、黒茶系の木造作と漆喰壁や障子の白のやわらかいコントラストが役者を惹き立てています。また、夕暮れや夜のシーンで見られる行灯や提灯の火も美しく感じました。特に行灯は丁寧なつくりを感じさせるものや優美な曲線を用いたもの繊細な工芸が施されたものが幾つか目にとまりました。

外部空間と内部空間を紙一枚で仕切る障子は日本人の四季への感性を豊かにさせてきた歴史があります。また、日本の風情ある照明の代表格である行灯は、光と影を身近に意識させることで揺れ動く人の感情の抑揚を制御してきた様に思えてきます。ストレスの多い現代生活、リビング空間に便利さに頼る電気照明の他に、光と影を演出する行灯のような照明器具がこの秋の夜長に欲しくなってしまいます。

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