建築現場技術者心得~おわりに~

これらの『建設現場技術者心得』は、私がまだ現場監督として駆け出しの頃、私に仕事をはじめ遊びも教えてくださった2人の大先輩による教えのものが多く含まれています。

Genbanochikara001_2 当時はバブル時代であっただけ現場でいろんなことを学びました。というのも現場では職人不足の時代で、自分で職人の真似事でいろんなことも自身でしたからです。

学生時代に建設現場等で数々のアルバイトを経験していた甲斐もあり、バブル時代の最繁期での現場での仕事は、手先の器用さと感の良さが随分と役立ったこともありました。将来は建築技術者というより、腕をあげて職人になったほうがいいのではと感じたこともありました。

一方、現場監督という立場から、施工計画書類などの作成も、いまではパソコンでどこかしらからコピーして作成するのではなく、当時はほとんど手書きでした。いろんな資料を収集しました。

施工図もドラフターで自分でかき、字消し版との格闘で、右手の拳脇は製図ペンの黒鉛で真っ黒でした。新入社員時代から独り現場を多く経験させられ大変でしたが、振り返ればその時に仕事をかなり覚えた気がします。

一生懸命やっているご褒美なのか、夜はかなり遅い時間から、その2人の大先輩たちに連れられいろんな場所へ飲み出かけました。思えばバブルの時であったのでいろんな場所で様々な社会勉強をすることができました。仕事に、遊びに本当にいろんななことを覚えた若年時代でした。

そのときお世話になった大先輩方には本当に感謝を敬意を抱いております。

Genbanochikara004_3 ところが、残念なことにバブル崩壊後数年後、私の師匠ともいえる大先輩であったお2人共に、癌にてこの世から去って逝かれたのでした。仕事では、両氏の元を離れ一人前扱いされるようになった矢先くらいのときでした。

たて続けにあった出来事に大変ショックでした。いろんな想いを胸に、さらに夢中に仕事に没頭し、技術を磨いてきた自分がいました。また建築家にあこがれ、多くの専門知識を得ようと建築関連の資格もたくさんとりました。

そして今、自分が様々な立場で建築技術者を指導する場に立つようになって、自分の若い時代を振り返り、私を鍛えてくださった大先輩2人の熱意を思い起こし、そのDNAを伝えていかねばという使命感から活字化した次第です。

たまに、私自身もここで記述した125の心得を振り返っては気を引き締める時もあります。
「現場」が建築のものづくりの原点だと真剣に感じます。

今後も温故知新の精神を大切にしながら、故人となった大先輩お二人に感謝の気持ちをこめて、若い世代の現場技術者にこの訓示を紹介してきました。

デジタル化の進む建設業界において書類等がフォーマット化され、建設現場でまとめなければならない多用な書類が在ります。
最近では、アスベストの対応、構造偽造問題を発端とする構造関連の資料作りやISOをはじめとする品質管理や環境への配慮の為の報告書づくりなど多岐にわたります。

今の建築現場の環境は、心無しか若年の建築技術者を見ていると、それらの書類をこなそうと必死になり、時間を多く費やしているように思われます。

もっと「建築」のものづくりは、楽しいもののはずだったのでは無いだろうか?建設業の技術者ってそんなでいいのだろうか?とつくづく感じます。

特に『技術者』とはフォーマット化されてない事象でもそれを客観的に捉えた上で、自分の感性(五感)で受け止め、新たに秩序だてた法則や対応策を創造できる能力を持ち合わせている人材なのではないでしょうか?それには、経験で得たアナログ的な的確な感性が必要なのです。

昔から建築の世界では、「10年経ってやっと一人前程度」と言われます。本当によく言いあらわした言葉です。でも、パソコンばっかり見つめて管理をおこなっている技術者にとっては、20年経っても一人前にはなら無いでしょう。時分の感性の高い時期を、パソコンの世界中心で過ごしているのですから…。

つまり、この心得は、近年デジタル管理化され膨大なフォーマット化された書類の処理業務に翻弄され、本来の『建設業』に必要な、経験的に身につける『匠』的な技術や『俯瞰』的な視野を身につけることを忘れつつある今の若い建設技術者や高度情報化社会の対応の遅れで焦りつつある業界体質自身への警鐘でもあります。

この心得を読んでくださった建設業関連の方々に、より多く共感するものがあれば幸いです。
『魅力ある建設業』を築き上げる為にも、『骨のある建設技術者』が育つことを望みます。

また、ここで紹介する心得は、部分的に読み替えれば建設業の技術者のみに訴えるものではありません。他産業の技術者の方々も、紹介した心得を参考活用し、より多くの優秀なアナログに長けた若い技術者が誕生すること望みます。

日本人の質実さが技術者としての適性にあっている事から、これからの国際社会の中で活躍できる『骨のある技術者』が多く育成されることを願います…。

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